vol.44 助け合って楽しみも苦しみを分かち合える場づくりをしたい

2016/07/11

 昨年2015(平成27)年、日本の75歳以上の人口は1,646万人。要介護認定者は600万人を超えました。これは国民の20人に1人の割合です。これが、「団塊の世代」が75歳以上になる2025年には2,179万人まで膨らみ、要介護認定者は700万人となる見込みが発表されています。このまま行けば、国民の5人に1人は75歳以上となり、15人に1人は要介護者となるということです。

 おまけに、介護従事者や介護施設の不足から、「介護難民」という言葉も生まれました。核家族・単身生活などという社会環境や少子化の中で、現在は外国人に頼らざるをえないという状況もあります。

 そんな今の日本政府の対応は、「在宅介護」の促進です。公的な介護サービスを受けられない場合のしわ寄せは、家族が受けることになります。厚労省の発表によると、2013年の介護離職者は9万3,400人で、少なくとも今後毎年10万人ずつ増加していく見込みとされ、働きながら介護している人は240万人と推測されています。

 2000年に開始された介護保険制度も、開始当年度は3.6兆円だった総費用が、2014年には10兆円。2025年には21兆円に膨らむと推測されています。介護サービスの費用は、利用者が1割、その他を40歳以上の国民が支払う保険料と税金で賄っています。そんな中、実施されたのが昨年夏の介護保険制度の改正でした。収入に応じて約2割の高齢者を対象に、自己負担額が倍に引き上げられたのです。晩婚化や非婚化も進み、子育て世代には待機児童問題など厳しい現状があり、40歳以下の年代が極端に人口減少している日本においては、身の丈を超えた国外への経済的支援や、働き盛り子育て介護世代の紛争地域派遣など、国内の現状を無視しているとしか思えない政策を、根本的に見直さないかぎり、戦後70年かけて築いてきた“世界に誇れる日本”は消滅し、福祉も何もない「勝手に死になさい」の世界になってしまうのではないでしょうか。

 内閣府発表の2015年度の高齢社会白書では、65歳以上の4人に1人が「親しい人がいない」のだそうです。地域でのつきあいがないとか、日頃の人との会話が2~3日に1回以下の割合が4割近くになるなど、人との関係が希薄になっています。インターネットの普及により、ますますこれらの数字は増えるであろうと思われます。子育てや介護のさまざまな問題を抱え、将来への不安からの殺人や自殺、心中が後を絶ちません。

 助け合って人生の楽しみを共有し、苦しみを乗り越える、そんな人間関係づくりの場を早急につくりたいと、少林寺拳法グループは考えています。高齢者に、人の手を借りず、健康で生活できる介護年齢の引き上げのお手伝いや、助け合える人間関係による孤独からの脱却。子供から、人生をさまざま経験してきた年代までが集う道院(拳士の集う場所)が、子育て世代のサポート空間になったりと、可能性は広がります。