vol.45 判断力を養う場を提供したい

2016/08/02

世界のあちこちでテロが起こり、リオデジャネイロ・オリンピックも目前となり、人が大勢集まるところは危ないといわれています。世界でもまだ安全だといわれる日本においても、殺人事件や若い女性への暴行も後を絶たず、山中や河川でバラバラ遺体が見つかることも珍しくない昨今です。

そんな中、今回の「ポケモンGO」を巡る人々の行動、正直、私には異常とも見えてしまいます。私はゲームに夢中になるタイプではありませんが、ゲーム嫌いでもありません。ゲームそのものではなく、画面に入り込み、周囲が見えなくなり、周囲への迷惑や自身の安全さえもまったく意識からなくなる怖さのことです。歩きながら人にぶつかるなんていうのは日常茶飯事で、駅のホームから転落した人、車にはねられた人、ヒグマに遭遇した人までいます。ゲームに熱中するあまり、ふだんでは考えられないような行動をしてしまう人が続出していることに、大きな危機感を抱きます。それが子供ではなく、多くは大人たちだからです。現代人の生活に最も身近なスマートフォンで、人間の思考や行動を簡単に操られてしまうとしたら、こんな恐ろしいことはありません。

ブームは1~2週間だろうという人もいるようですが、問題とすべきは、期間でもポケモンのキャラでもなく、ネット社会では瞬時に多くの人を動かしてしまう見えない力が働いているということに鈍感なことではないでしょうか。

戦後71年。その時々の大きな繁栄を得た日本は、その陰で、大切なものもいっぱいなくしてきました。その結果として、ここまで日本を築き上げてきた高齢者が孤独な社会となり、その負担が働き盛りの年代に一挙に押し寄せ、次代を担う子供たちを生み育てる環境も整わず、幸せのサイクルが崩壊してしまっています。

8月は、原爆記念日および終戦記念日の月です。経験者が少なくなり、色あせてくることに危機感を持ち、憲法改正が進む今、“自分で考えない、悩まない”習慣を変えたいと思います。

そんな現代だからこそ、私たち少林寺拳法グループは、生身の人と人が向き合う身体コミュニケーションを通して、判断力を養う場を提供したいと考えています。