vol.54 心に根ざす金剛禅

2017/09/01

 少林寺拳法に出会って11年。思い起こせば、息子が小学3年生の時に「友達と一緒に少林寺拳法をやりたい!」と言い出したのが全ての始まりでした。当時私は、少林寺拳法は武道の一種という程度の知識しかなく、「男子たる者、武道を経験するのもいいことだ。」くらいの考えでおりました。息子の送迎から始まり、保護者として道院の行事にも関わるようになりました。ある時、毎年恒例の福島桑折道院キャンプの席で、齋野道院長から入門を勧められ、酔った勢いで快諾したら、翌日には既に拳法着が用意されていたという不思議な出来事を今でも忘れられません。娘も道場の片隅で遊んでいるうちに、「私も拳法やるっ!」と言い出し、いつしか親子3人で修行するようになりました。現在は、息子も娘も休眠しておりますが、おかげさまで息子は今年の春、医療大学を卒業し、病院のリハビリテーションの作業療法士として就職することが出来ました。作業療法士とは、食事、入浴、着替えなど、患者さんの日常生活に関わる全ての活動を介助し、患者さんが日常生活の訓練を通して社会とのつながりを作っていくことを支援する仕事です。
 超高齢化社会により社会とのつながりを維持できなくなる人は、今後ますます増えていくでしょう。そんな人々に寄り添い、励まし、社会復帰の手助けをする仕事に必要なものは、作業療法士の技術を「力」とするなら、患者さんへの支援は「愛」であり、まさに「力愛不二」の実践なのかもしれません。また、その実践の中には、金剛禅の目指す「自己確立」と「自他共楽」の教えが重なっていると思います。彼が17歳でその道を志し、途中で投げ出さずにここまでこれたのは、少林寺拳法を経験して、彼の考え方の根底に金剛禅の教えがあったからではないでしょうか。以前、進路について私は彼に「自分の仕事によって人からありがとうと感謝されるような仕事に就きなさい。」とだけ伝えたことがあります。結果的に間違ってはいなかったのかなと思います。
 そして、道院に一人残された私は、今でも齋野道院長先生をはじめ、良き先生方のもと楽しく修行しています。当時幼かった子供たちの入門により少林寺拳法とのつながりを持たせてくれた「架け橋」を大切にし、これからも福島桑折道院で金剛禅の修行を楽しんでいきたいと思います。
(福島桑折道院 仲野 剛)

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