vol.55 昭和史~開祖の生きた時代

2017/11/01

 数々の体験から、幸福な人生を築き、平和で豊かな理想境を、祖国日本に実現するためには、自分がどのように生きれば良いか、また、人々をどのように導けば良いか、そして、その目的にかなう正しい手段はなにかを、開祖は教範第一編の第一章で明確にされています。 
 金剛禅は正しい釈尊の教えを基盤としていますが、何といっても開祖の体験に裏付けられた思想と行動から生み出された独自な新教団です。開祖は死に場所を求めて満洲事変直後の大陸へ渡り、持ち前の正義感と卓越した行動力で現地民衆の信頼を受けながら、また一方では彼ら民衆の強い横の団結に教えられながら、自分自身のなかに透徹した世界観の基礎を育まれていくのです。従って、開祖の思想が確立されていく青春時代の背景=昭和初期の歴史を学習することが、金剛禅の原点を理解することにつながります。
 明治維新以後日本の歩んだ道を、とりわけ開祖が青雲の志を抱いて再度大陸に渡られた昭和三年前後から、昭和二十年の敗戦を経て帰国、混乱の渦中に金剛禅を創設された昭和二十二年前後までの歴史を把握することは、金剛禅の原点を知る上で不可欠の要素といえます。金剛禅の運動としての原点は激動の昭和史の中に胚胎しているのです。
 開祖がどのような時代を生き抜かれ、どのようにして金剛禅の思想の基盤を確立されていったかを知ろうとすることが、開祖の想い、志を理解し共感することにつながるのです。
(文/東山 忠裕)

 

年号 年齢 開 祖 社 会
明治 44 出生(本名:中野理男)  
大正 3~7     第一次世界大戦
  8 8 義父 理一死去 戦後不況
  12 12   関東大震災
  14 14 満州に渡る。父方の祖父 宗重遠に引取られる  
      奉天中学校入学  
  15 15 母・吉野死去、妹・智恵子死去  
昭和 2 16 妹 聡枝死去・祖父 重遠死去 天涯孤独となる 金融恐慌
  3 17 再度満州へ。特務機関に従事。陳良老師に出会あう 張作霖爆殺事件
  4 18 満蒙大旅行にて各地の拳技に触れる 世界大恐慌
  5 19 各務原飛行連隊に入隊  
  6 20 心臓弁膜症と診断され除隊 満州事変
  7 21   五・一五事件
  11 25 嵩山少林寺にて文太宗老師から義和門拳第二十一代師父継承 二・二六事件
      白衣殿(現・観音殿)羅漢練拳の壁画に強い感激を覚える  
  12 26 満州鉄道の鉄路警護隊員となる 日中戦争
  14 28 満州綏陽県商工股長として国境の町綏陽に赴任  
  16 30   太平洋戦争
  18 32 満州綏陽商工会事務局長となる  
  20 34 中国東北部にて敗戦を迎える 広島・長崎に原爆投下
      ソ連軍の侵攻に対し必死の逃避行 ソ連参戦・日本無条件降伏
  21 35 六月、引上部隊の中隊長として佐世保に上陸 敗戦直後の混乱期
  22 36 10月25日、多度津町に少林寺拳法誕生