vol.56 ひとの役に立ち喜んでもらえるように生きるための人間力を
2017/12/01
「与える喜び……」
小学校5年生になったとき、父が私に贈ってくれた言葉です。
「自分がひとから何かをしてもらったらうれしいだろう。しかしそれよりも自分が人のために何かをしてその相手が喜んでくれたら、もっとうれしいんだよ」と日々聞かされていました。
ひとを傷つけたり苦しめたり、時には自分のエゴで生命まで奪ってしまうなど、マイナスのニュースが多い昨今、私たち少林寺拳法グループは日々の生活の中にひとに喜んでもらえる瞬間や、「ありがとう」の言葉が飛び交う空間をもっと作りたいと思います。
私の母は、不在がちな娘に代わって私の息子たちを育ててくれました。感謝の気持ちは伝えても、何か母を喜ばせることはできないかといつも考えていました。ちょうど母が還暦を迎えたとき、母の親しい方々に声をかけ、まったく母が予想できないサプライズを仕掛けて、大成功を納めたことがありました。そのとき学んだことは、母のことを日ごろから関心を持って知ろうとしていなければ、喜んでもらえる企画はできないということでした。そして母自身も同じような感覚を持って人とのお付き合いを大切にしていたから、協力してくだった方々がドキドキしながら一緒に企画実行を楽しんでもらえたということです。母は古希そして次の喜寿はと、ウキウキ期待に胸を膨らませて、それが元気の元となっていました。息子たちとウキウキドキドキの合作で、うれしそうな母そしておばあちゃんの姿を見ることが、私たちの大きな喜びとなっていました。
そんな母も他界し励みがなくなりぽっかり空洞化していたところ、先日息子たち家族がかつてと同じように、私の還暦をサプライズで祝ってくれました。私は、心臓が口から飛び出すほど驚きウルウルでした。呼びかけに応じて下さった方々も私のプライベートな関係の方々ばかりで、家族が「私のことを知ってくれている」ということが何よりの喜びでした。私のヒストリー映像に至っては、私の両親の結婚式の写真から始まっていました。息子たちからすれば、祖父母がいたから母が生まれ、そして自分たちが存在すると。この何気ない当たり前のことが、私の孫たちも同席するうれしく楽しい空間の中で伝わっていることに、改めて大きな価値と喜びを感じました。
創始者宗 道臣は、「縦糸と横糸がバランスよく強く織り合わさって強い布となる」とよく言いました。
中島みゆきの「糸」の歌詞にもあるように、「縦の糸はあなた 横の糸は私 織りなす布は いつか誰かを 暖めうるかもしれない」そんな人としての生き方を伝えるために、ひとの役に立ち喜んでもらえるように生きるための人間力を養える少林寺拳法でありたいと思います。