vol.61 海老名国分道院 道院長 沼内寿浩

2018/11/01

海老名国分道院 道院長 沼内寿浩

道院名:海老名国分道院
道院長名:沼内 寿浩(ぬまうち としひろ)
中導師、准範士、六段 439期
1970年7月17日生まれ 48歳
出身地:神奈川県
1985年15歳で海老名21C支部(当時のカルチャーセンター支部)入門。
1992年支部廃止に伴い所属の拳士が立ち上げた海老名国分道院に転籍。
1993年大学卒業後、自動車部品メーカーで外装部品の設計を担当。
1996年より富士ゼロックス(株)入社。
2013年より代務。
2015年より海老名国分道院長。
現在に至る。

海老名国分道院 道院長 沼内寿浩

—道院長になろうと思ったきっかけは何でしょうか。
2001年に現在の自宅(綾瀬市)に引っ越し、周りに子供が多かったことから、「いつかは自宅近くで道院を開き、道院長として青少年育成に貢献したい」と考えるようになりました。
少しずつ場所探しをしていたのですが、2013年、諸事情により道院長引継ぎの必要性が生じました。そこで自宅近くでの設立を諦め、長年お世話になった海老名国分道院を維持・発展させていく覚悟をし、現在に至っています。
専有道場確保が難しい中、当道院は幹部拳士が自宅敷地内にある離れを改装して道場の整備をしてくれました。現在も継続して使わせて頂ける恵まれた環境にあることも、道院長を引き受けた理由の一つになっています。

—道院での指導方針や、指導法としての工夫を教えてください。
まずは楽しく!来ることが楽しみになるような道院を目指しています。
当道院は稽古以外のイベントが比較的多いと思います。
稽古終了後のおやつ会(お菓子&ドリンク)、道場の駐車場で行う正月の餅つき大会、春の花見兼BBQ、県外の施設で行う夏合宿、秋の焼肉パーティ、年末の納会(クリスマス会)、など。
稽古では「全ての動作に意味がある」ことを理解させています。
正しい動作、例えば構え、攻撃、足捌、体捌、当身など、何故そうなっているのか理由が必ずある。逆に理由の無い動きは極力しないこと。これを少年拳士に対しても細かく説明しています。「これが決まりだから」という指導はしません。
理解した上で数を掛ける稽古をすることで、本当の意味での上達が期待できると考えます。
また、道院の役割として、金剛禅の学習も欠かせません。
毎回学科の時間を設け、読本や教範だけでなく、僧階教本も活用しながら自分の言葉で説明しています。
特に教典は奥深く、行間を読み込んでいかないと本当の意味を理解できませんので、時間を取って学習する機会を設けています。

—道院長になって出会った感動のエピソードをお聞かせください。
道院所属の拳士は多様性に富んでいるため、部活動、受験、進学、就職、海外転勤、結婚、出産などそれぞれ様々なライフステージにあります。
したがってどうしても稽古が続けられなくなることがあります。
そこで前述した各種イベント時には、休眠拳士にも必ず声を掛けます。多数参加してくれます。
また、進学が決まった、就職が決まった時も報告に来てくれます。
海外勤務の拳士は、一時帰国すると必ず顔を出してくれます。
自身の環境が整い、また現役拳士として復帰してくれる人もいます。
私自身この部分に大きな喜びを感じており、道院長を続けるモチベーションの一つになっています。休眠拳士がいつでも戻ってくることができる場所として、道院を存続していくことが大切だと思っています。

—道院長として、今後挑戦したいことや夢などを語ってください。
道院で開催するイベントですが、まだまだ保護者の方の参加が少ない。もっと保護者を巻き込んだイベントにしていきたい。これを通じて家族で入門する人が増やせればと思います。また、近隣の道院や支部との交流ももっと深めていきたい。海老名市内には当道院のほか、2道院、2高校支部の5団体があるのですが、さらにもう1団体(スポ少)増える予定もあります。海老名市少林寺拳法協会として、大会や合同稽古、市内スポーツイベントなどに参画していますが、各所属独自のイベントでも交流して更に強い関係を結んでいきたいと思います。

—仕事や私生活(家庭、子育て)についてどの様に両立させている点をお聞かせください。
職場では自分が少林寺拳法の指導者だということと、稽古日時を広く知らしめてしまうこと。そしてそれ以外ではしっかりと仕事をして成果を挙げていくこと。そうすれば、皆協力的になってくれます。
家庭では、家族の理解も必要ですが、家族を巻き込んでしまえば成立。うちは息子2人が拳士。家内は拳士ではありませんが、息子達を稽古に連れ出せば家内一人の時間を提供できるので、Win-Winになっています。

—最後に、将来、道院長を目指す全国の拳士へ、ひと言エールをお願いします。
道院長を引き受ける前年、職場の役割が管理職となり多忙な生活に変化しました。時間的制約で道院長を引き受けるのは難しいのではと心配しましたが、今思うと要らぬ心配でした。人間、時間が無ければ無いなりに工夫して、時間を生み出すことができるものです。また、頑張っていれば、周りが助けてくれます。つまり「何とかなる!」ということです。
実際に今では限られた時間で成果を出す働き方を実践することができていますし、仕事も家庭も犠牲にせず、道院長を続けられています。
世の中では働き方改革が進んでいます。日本は先進国の中でも労働生産性が著しく低いと言われ、これを改善して仕事以外の余暇や自己啓発に充てる時間の創出が求められています。以前、ある指導者から「道院長をやるなら仕事や家庭を犠牲にするのは仕方が無い」と聞いたことがありますが、今はそんな時代ではありません。追い風だと思います。
専有道場の確保などの課題もありますが、それがクリアされるのであれば、是非臆することなく道院長を目指して欲しいと思います。好きな少林寺拳法を通じて人を育てることができ、自分自身も成長していける喜びが待っています。