vol.61 親子演武を夢見て

2018/11/01

 私が少林寺拳法を始めたのは十歳のころだった。運動嫌いだった私は、親に連れられて仕方なしに通っていた。それが自分から積極的にやろうという姿勢に変わるまでには相当な年月がかかった。
 それに比べて、私の娘は運動好き。小学二年のときに少林寺拳法を始め、今年で二年目である。そしてなんと、拳歴二年目にして県大会で最優秀賞をとってしまった。親の私は成人すぎるまで、大会でまともな賞なんかとったこともない。親と子で大変な違いである。
 わたしの家では、義父、私、娘と三世代で少林寺拳法をやっている。義父は道院長であったが、平成三十年度より私が道院長を交代した。私が道院長になることを娘に話したとき、娘から「じゃあ、その次の道院長はわたしがやる」という言葉が帰って来た。その言葉は私もまったく予想していなかっただけに驚かされたが、仮にこの言葉が、その時だけの気持ちだったとしても、大袈裟かもしれないが、涙が出るほどうれしかった。そして少林寺拳法をやってきてよかったと思えた瞬間であった。
 三十数年続けてきたこの少林寺拳法を、現在、娘と一緒にやっている。口に出してこそ言わないが、たまらなく嬉しく、幸せに感じている。私が少林寺拳法で培ったものは、娘になら無条件ですべて手渡したいと思っている。それは義父も同じであろう。
 今の私の夢は、娘が小学六年の年に、大会で親子演武をすることである。娘と一緒に演武ができたらどんなに嬉しいだろうかと自分独りでその時のことを想像して、今から勝手に感動したりしている。しかしその頃、娘がお父さん嫌いになっていたらどうしよう、そうなりませんようにと不安を密かに抱えつつ、ひとり娘の成長をしっかり見守っていきたいと思う今日この頃である。
(豊南道院 竹内 猛)