vol.65 人間の劣化の歯止めに役立てたら

2019/08/05

 ウエブサイトやブログに続きソーシャルネットワーク(SNS)の普及により、瞬時に世界中に情報発信される時代です。しかし、これらはスピードだけではなく“共有と共感”を求めるものが多く、人と直接接しないことから「痛み」に無関心でいられるバーチャル世界であり、そのやり取りはどんどん負の方にエスカレートしていく危険性をはらんでいます。
 本来、人と人との現実の関係を、インターネットを使って補助するコミュニケーションサービスであるはずが、孤独なあまり自分の存在感や共感を求め、過激な書き込みをしたり根拠のない誹謗中傷を書き込んだりする人がいます。
 どんな厳しいルールを設けても、根絶することは難しいのかもしれません。
 そんな中、今回の堀ちえみさんのブログに誹謗中傷を書き込み続けた50代の女性が書類送検されたという報道には、正直驚きました。
 たまたま表示されたおすすめブログから入ったそうですが、堀ちえみさんに対する他のネット上の誹謗中傷記事を根拠もなく鵜吞みにし、堀ちえみさん自身が闘病生活を綴ったブログに「噓つき」「死ね」などと悪態をつく書き込みをしたといいます。
 日本は自由社会だからと、言論の自由をはき違えている人が多いように思います。自由と責任は表裏一体です。小学生ではありません。50歳も過ぎたいい大人がしたことに驚きます。書類送検後のインタビューでも、「殺す」と書き込んだわけじゃない「死ね」と書き込んだだけだと悪びれることなく平然と答え、自分が情報の判別ができず生死にかかわる病で闘病中の人を傷つけたとは全く思っていなかったようです。
他人に注目されたくて他人を傷つけるでたらめを書き込む人も書き込む人ですが、何の分別もなく垂れ流される無責任な情報を鵜吞みにし、その影響も考えることなく拡散したり煽ったりと、ネット上でのみ感じることのできる自分の存在感に酔っているような人が増えている現代の日本。危機だと思います。
インターネットが悪いわけではありません。社会が進化しているにもかかわらず、それを使う人間が劣化していることの問題だと私は思います。
「半ばは自己の幸せを、半ばは他人の幸せを」という教えを大切にする少林寺拳法。人間の劣化に歯止めをかけることに役立ちたいと思います。