第6回(最終回)長寿って何だろう

2019/04/26

健康ライフのパスポートも、今回で一つの締めくくりとなる。 前回コラムから、健康とは何かについて、根本的な定義に立ち返って考えた。 そして、一つの気づきがあった。個人が良好な状態を「健康」というのに対して、「多数の人=社会」が良好な状態を平和といえるのではないかだろうか。 身心共に健康な人の集まりが、社会の平和をつくる。そして、また社会が平和だからこそ、安心して健康な人生が過ごせる。社会とは、個人が有機的なつながりを持って成り立つもので、相互に及ぼす影響が多大であることは考えるに難くない。不健康な人が増える社会は、平和とは言い難い。あなたの周囲には、今、平和は実現されているだろうか。

  • 田中カ子(かね)さん116歳

平和が成る時代「平成」もあとわずか。4月1日、新元号「令和」が発表され、5月1日、新天皇陛下の即位とともに改元となる。

ニュースでこんな様子が報道されていた。

https://mainichi.jp/graphs/20190401/hpj/00m/040/003000g/21

5つの元号(明治・大正・昭和・平成・令和)を経験した人ということで、1912(明治45)年以降に生まれた107歳以上のご高齢の方々が、テレビでインタビューに答えていたのである。

中でも、世界最高齢116歳の女性のインタビューの映像を見て、なんてお元気なのだろうと思われた方も多いのではないだろうか。

そして、明治時代に生まれ、大正時代~昭和の戦争を経験し、平成・令和時代を生きる大先輩は、現代の社会・風景をどう感じているのか、とても気になるところである。

そこで、彼女を調べてみると、こんな取材記事を見つけることができた。

116歳女性の田中カ子さん、1903(明治36)年生まれ。

この年は、ライト兄弟が人類初の動力飛行を成功させた年でもある。

翌年は、日露戦争が始まるなど、歴史の教科書に載るような出来事が起きている。

田中さんは、夫や息子が第二次世界大戦に出征したため、家業の餅米屋を女手一つで切り盛りし、戦後まで経営をしていた。103歳のときにがんの手術を経験するも、それ以外は、大きな病気もなく、まさに健康そのもの。

驚くのはそのメンタリティーで、過去取材で、「死ぬ気がしない」という発言や、人生でいちばん楽しかった時は? という質問に、「今」と返答されている。

また、食べ物の好き嫌いもなく、好きなものは我慢せず、一日3食の食事をほぼ完食し、甘いものが好きで、缶コーヒーや栄養ドリンク、炭酸飲料などを毎日3本は飲んでいるという。

116歳の時点で手押し車を押しながらの歩行が可能で、ご自身で食堂やトイレにも行くことができる。そして、長寿の秘訣ともいえる趣味は「勉強すること」で、「まだまだ勉強途中」と話す田中さんは、朝食後にスタッフとオセロをするのが日課であり、老人ホームの入居者やスタッフと毎日対戦している。しかも、負けず嫌いな性格のため、勝つまで続けるとのことである。また、算数教室にも週一回通い、詩を作ることも趣味なのだそう。まさに、日頃から頭を使うなど、楽しみを見つけることが長寿の秘訣といえるのではないだろうか。

われわれも、「昭和・平成・令和・●●・▼▼」と五つの元号を経験できるほど、健康で長く豊かな人生を目指して、想像もつかない時代の変化を、この目で確かめてみたいものである。

  • 人の役割

人は、生まれたときから死ぬ寸前まで、もっというと死後まで、身近にいる人及び社会に対して何らかの役割を担っている。そして、何らかの役割を担う人の身心の状態をよりよく保つことがどれだけ大切なのかを、田中さんの記事からも気づくことができた。世界一の長寿として、ギネス記録を持つ彼女の存在から、ただ生きているだけで尊いということが際立って感じさせられた。

田中さんの人生を見ると、戦争中は家族のため、そして、今は自分のために生きているように思う。でもその姿が周りに与える影響は計り知れない。116歳まで、すべての人が生きることは難しい。でも、そういった生き方そのものは、すべての人が見習いたいと思えるのではないだろうか。

  • 最後に

「 健康ライフのパスポート」は、これで最後の記事となる。しかし、少林寺拳法グループでは、「世界の平和と福祉に貢献せんことを期す」という言葉のとおり、そして、時代の要求に即して、今後ますます、人々の身心の健康に貢献できることを考え続け、発信・実践していきたい。