Vol.76 調和のとれた生き方

2021/07/01

osawa

合掌
 7月になりました。人の体は夏に向けて徐々に適応していくようにできていますが、夏の暑さに体が追い付かない場合もありますので、健康には十分にお気をつけてお過ごしください。
 さて、7月と言えば皆様もご存知の七夕があります。七夕伝説も諸説あるようですが、おおよそ次のようなお話です。天帝が神様の着物を織る織姫と、まじめな牛飼の彦星とを引き合わせ結婚させます。ところが結婚後、二人は毎日遊ぶばかりで仕事をしなくなり、怒った天帝が二人を引き離したところ、今度は悲しみのあまり仕事をしなくなりました。そこで、二人がまじめに働くことを条件に、1年に一度会うことを天帝が許し、それが7月7日となっています。
 ここでは、愛する二人が一緒にいても、離れていてもうまくいかない人の距離感や、世の中においては自分の思い通りにいかないという世界観が描かれていると見ることもできます。人が生きていくには何事もバランスが必要ですが、偏りが生じるとバランスが崩れ、それが苦しみや悩みという形で私たちの前に現れます。四苦八苦と言うように、生きていればありとあらゆる苦悩が起こります。しかし、その苦悩を起こしているのは、時代や環境のせいでも、周囲の人間のせいでもなく、他ならぬ私たち自身にあります。自身の心の問題であると捉えることができれば、自分が変わることで苦悩から抜け出すことができます。
 私たちは幸いにも「調和すること」を開祖の言葉と易筋行から学んでいます。それは釈尊が唱え、達磨が伝えた正しい仏教です。自分とパートナー、自分と仲間、自分と社会というように自身と他者に分けたとき、自分だけが幸福でも他者が幸福でなければ幸福度は50%にすぎません。しかし自身も幸福で他者も幸福なら幸福度は100%になります。自分だけが十分幸福になることは無いことを修行と学びを通じて知っています。「半ばは他人の幸せを」の教えです。人は一人では生きて行けません。社会の一員である以上、社会全体が幸せにならなければ小さな幸せを手に入れることができても、より大きな幸せを得ることは困難です。この教えを引き継いでいる皆様には、ご自身の人生の道標とするだけでなく、どうか周りの人に、次の世代の人にも伝えて頂きたいと思います。
 さあ、今月も仲間と共に修練に励んでいきましょう。自己の幸せのため他人の幸せのためにも。
合掌再拝

※参考
釈尊は、人間には、「生、老、病、死」という避けることのできない苦しみがあると説かれ、これを四苦と言っています。さらに愛別離苦(愛する者と別れる苦しみ)、怨憎会苦(怨み憎んでいる人と会う苦しみ)、求不得苦(得たいものを得られない苦しみ)、五陰盛苦(人間の体や心を形成する五つの要素から生じる苦しみ)を加えて八苦と言っています。